般若寺楼門 一棟
般若寺は、高句麗の僧慧潅法師が精舎「般若台」を開創、その後聖武天皇が伽藍を整え勅願寺としたと伝える。鎌倉時代に復興され、建長五年(一二五三)頃石造十三重塔が完成し、文永四年(一二六七)には、叡尊発願の文殊像が供養された。楼門の建立も文永頃と考えられる。一間一戸の珍しい楼門で、上階は桁行三間、梁間二間をなす。ほとんど和様からなっているが、肘木及び実肘木に大仏様の影響を受けた繰形を有する。ことに肘木鼻に繰形をもつのは、類例の少ない手法である。全体に形態がよく整い、意匠的にも優秀な遺構で、鎌倉時代における異色ある楼門である。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)