東大寺南大門 一棟
治承四年(一一八〇)平氏の焼打によって灰燼に帰した東大寺の復興に際して建立された伽藍の遺構で、正治元年(一一九九)に上棟した。完成の時期は明らかでないが、建仁三年(一二〇三)の供養までには落成したであろう。工事にあたった重源は中国宋の建築様式を取り入れたが、これを大仏様と呼んでいる。巨大な二重門で、太い通し柱、深い軒をささえる挿肘木、六手先の組物、鼻隠板を打った一重の軒、隅だけの扇垂木、木鼻には特色ある繰形を用い、化粧屋根裏で天井は張らず、虹梁は太く断面は円形で、板桟戸を用い藁座をもって貫に吊り込むなど、大仏様の特色をよく表しており、その構造的な美しさは注目に価する。なお左右両脇の間には金剛力士像(国宝)が置かれている。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)