室生寺本堂(灌頂堂) 一棟
本堂の建立年代は建内記という日記の文安四年(一四四七)の記事から、延慶元年(一三〇八)に供養されたものである事がわかる。その後の沿革は明らかでない。方五間の堂で周囲に切目縁をめぐらし、正面に蔀戸を吊るが、側面及び背面には桟唐戸を用いる。組物は二手先をなし、入母屋造で、妻には虹梁大瓶束を用いている。内部は前二間を外陣とし、天井は外陣を折上小組格天井、内陣を小組天井とする。内外陣の境は桟唐戸及び連子窓を入れ、内陣には左右に板壁を一間設け、曼荼羅をかける。なお堂内にある厨子及び仏境もまた鎌倉時代の優秀な作品である。
この堂は和様を主としているが、頭貫木鼻、扉、妻などに大仏様や禅宗様の手法がみられ、しかもそれらがよく取り入れられて全体の形のよく整った建築となっている。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)