長弓寺本堂 一棟
長弓寺の創立は行基(六六八~七四九)によると伝わるほか諸説があるが、明らかでない。本堂には「長弓寺棟上弘安二年(一二七九)卯己二月廿五日」云々の銘を墨書した棟木が三本に分断して保存されていて、建立年代が判明している。
堂は低い基壇の上に立ち、桁行五間、梁間六間、向拝一間付の規模をもっている。正面中央三間及び側面の前二間には桟唐戸を入れ、ほかは連子窓または壁である。組物は三斗組の簡単なものであるが、正面は中備として蟇股を入れて飾っている。内部は内外陣に分かれ、引違格子戸及び菱格子欄間をもって区画されている。内外陣の境上の組物の中備としては、やや装飾化した双斗があり、また虹梁鼻の繰形など、細部には大仏様の影響がみられる。
本堂は鎌倉時代和様仏堂の代表作のひとつであり、建立年代の明確な点でも、貴重な遺構である。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)