室生寺金堂 一棟
室生寺は、奈良時代末期の宝亀年間(七七〇~七八一)に創立されたところで、金堂はもと本堂または根本堂と呼ばれた。その建立年代は明らかでないが、寺の創立年代よりはややおくれて平安時代前期と考えられる。建立後平安時代後期頃に大修理が加えられ、また寛文十二年(一六七二)には正面一間通りの庇を改修し、屋根も現在のように葺きおろしとした。
桁行五間、梁澗四間(庇を除く)の堂で、組物は大斗肘木の簡素なものである。内部では外陣に虹梁をかけるが、虹梁に二種類認められるのは平安時代後期の大修理を物語るものであろう。天井は外陣を化粧屋根裏、内陣を組入天井とするが、当初はすべて化粧屋根裏と考えられ、また屋根も現在寄棟造であるが、もとは入母屋造のようである。このように若干の修理はあるが、この堂は平安時代前期の数少ない遺構の一つとして特に貴重である。なお仏壇背後の中の間の壁に描かれた伝帝釈天曼荼羅図も、絵画として国宝に指定されている。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)