西明寺三重塔 一基
三重塔は本堂の向かって右方に建つ。建立年代は明らかではないが、様式上鎌倉時代後期頃の建立になるものと推定される。その後江戸時代には相当に破損していたらしく、天和年間(一六八一~八四)頃に修理が行われた。
塔は純和様からなる三重塔で、初重の四周に切目縁をめぐらす。各重とも方三間で、中央の間を板扉とし、両脇の間には連子窓を入れる。二・三重には高欄をめぐらしている。組物は各重とも和様三手先で、中備として初重には三間とも間戸束を入れるが、二重は中央間にのみ束を入れ、三重はこれを略するなど、平面の逓減に応じた意匠がみられる。初重の内部は四天柱間に仏壇を設け、天井は折上小組格天井で、柱、長押、板壁など、一面に仏画や装飾文様を極彩色で描いており、よく残っている。現在水煙を欠くのは惜しいが、形態がよく整い、ことに立面は初重が高く、ひきしまった感がある。鎌倉時代三重塔のうち優れたもののひとつである。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)