當麻寺東塔 一基
當麻寺は萬法蔵院禅林寺ともいい、用明天皇の皇子麻呂子の創立、あるいは藤原豊成の娘中将姫の創めるところとも伝える。丘陵によって建立された寺院であるが、奈良時代の平地伽藍の配置にしたがって、強いて堂塔を南面させたため、東大門が主要な門となるなど変則的なところがみられる。この伽藍は古代に建立された東西両塔がともに遺存している唯一の例である。
東塔は建立年代、沿革ともに明らかでないが、様式手法からみて奈良時代後期のものであろう。西塔と対をなす三重塔であるが、初重は方三間、二・三重は方二間をなし、初重は各面とも中央間を板扉、両脇間を盲連子窓とし、ニ・三重はすべて連子窓で扉構がない。組物は三手組で中備はない。相輪は宝輪が八個である。奈良時代三重塔の遺例として貴重なものである。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)