支那の少女
Chinese girl
1926年
北海道立三岸好太郎美術館蔵[O-20]
三岸好太郎は1926(大正15)年の9月から12月にかけて、同じ札幌出身の画友岡田七蔵とともに中国を旅行した。上海、蘇州、杭州などをまわる旅で、上海の街の西欧的雰囲気に大きな魅力を感じるとともに、一方では中国の独特の風物にも興味を覚え、中国服の人物像なども多く描いている。「支那の少女」は胡弓を奏でる中国服の少女を描いた作品。左端には「丙寅十月 蘇州 李媛々嬢 三岸好太郎写」と書き込まれている。蘇州を訪れた際に、三岸はこの少女が演奏する姿を目にし、その華奢な姿を心にとめたのだろう。この作品は春陽会第5回展の出品作。第3回展で岸田劉生が退会した後の春陽会では日本趣味、東洋趣味ともいえる文人画調の作風が目立つようになっていた。そうした傾向への感応が、縦書きのサイン、薄塗りの画面などに表れている。少女の服や背景には墨のぼかしのような描き方も見られる。