東大寺二月堂は,大仏殿の東方にあり,8世紀後期の成立と考えられている。現在の堂は,寛文9年(1669)に再建された正面7間,奥行10間に及ぶ大建築で,前半が礼堂と西局及び舞台など,後半が内陣と外陣及び局で構成されている。
全体として,材料は精選された良材を用いており,施工も入念である。また,精緻な比例や強固な構造技法など,近世的な建築技術が随所にみられる。
東大寺二月堂は,古代から中世に拡充・発展させた平面や空間の特質を継承しつつ,近世の建築技術を駆使し高い完成度をもっており,江戸幕府による大規模な造営になる代表的な建築のひとつといえる。
古代から連綿と続く修二会ときわめて密接に結びついている類いまれな建築として,文化史的にも特に深い意義を有している。