東大寺法華堂 一棟
東大寺で創建当時のままの建物は転害門(西門、国宝)及び法華堂だけである。この堂は古くは桁行五間、梁間四間、寄棟造、本瓦葺の正堂の前面に別棟の檜皮葺の礼堂があったらしい。中世に入り、正治元年(一一九九)頃に五間二間の礼堂が再建され、正堂の寄棟屋根と礼堂の入母屋の棟とを丁字形につないだので、現在のように複雑な形になった。建物はその姿の優美さで知られ、正堂は出組の割合簡素な建築であるが奈良時代を代表する名建築の一つであり、礼堂では和様に大仏様の手法を加えた鎌倉時代の新傾向をみることができる。特に内部の化粧屋根裏の架構が傑出している。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)