上醍醐開山堂に祀られる本寺の開山聖宝僧正の肖像である。構造は、頭・体の躯幹部を大略前・中・後の三材で構成し、像底は十数センチ高に刳り上げ、そこに本体材から造出しの蓋をする、いわゆる上げ底式の内刳法を用いている。
頭・体部ともに奥行を充分にとり、膝も分【ぶ】厚くつくる体貌はなかなか重厚な趣きがあり、体側に垂れる袖の扱いも自然で、鎌倉中期の写実の風を示している。『醍醐寺新要録』等によれば、弘長元年(一二六〇)報恩院本画像に拠って木造御影が再興されたが、本像こそ正にこれに相当すると考えられる。現存する聖宝像中最も古く、出来のよい遺例として注目される。