木造不動明王坐像 もくぞうふどうみょうおうざぞう

彫刻 / 平安

  • 平安
  • 1躯
  • 重文指定年月日:19930610
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 大聖院
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 両眼を見開き、上歯牙を露わし、辮髪【べんばつ】の七か所を括るいわゆる弘法大師請来様の不動明王坐像である。辮髪を交互に編み込む形式は珍しく、他に園城寺像(長和三年(一〇一四)銘、重要文化財 昭和一三・八・二六)にみられるのみである。
 檜材の一木造、頭躰幹部は辮髪遊離部を含み木心を像内中央に籠めた一材より彫出し、躰部背面より内刳【うちぐり】(像底に抜ける)、背板【せいた】を矧【は】ぐ。両膝奥の大略各一材、両足部一材(各内刳)、裳先を矧付ける。両腕は肩、肘、手首で矧ぐ。表面は上半身胸部他に布貼り、錆下地の上に白地彩色を施すが、現状では大半が泥地に覆われる。臂釧【ひせん】および腕釧【わんせん】は漆箔。
 まことに頭躰の均衡がよく、安定感に満ちた姿で、頬を引き締めた忿怒相も迫力に富むとともに端正な品格を感じさせる。穏やかな丸味をもった肉取りや翻波式のなごりをとどめながらも浅く整えられた衣文表現にみられるその作風、宝相華【ほうそうげ】をあしらった臂釧の形式等は藤原時代初期の特色をよく示しており、製作の時期はおよそ十世紀後半と思われる。その洗練された出来栄えからみて、当代の一流仏師による造立であろう。
 光背は檜材製で、周縁の迦楼羅焔【かるらえん】を除く二重円相部と光脚が当初のものである。二重円相部は身光を五材矧の身光の前面に二材矧の頭光を取り付け、光脚(大略横一材製)の上面の溝に身光を挿込む。文様は頭光圏帯の対葉【たいよう】文、身光外圏帯の流雲文、光脚の対葉文を彫出で表し、身光部内圏帯や光脚の宝相華文等は彩色で表す。保存状態は良好で、彫出と彩色をまじえた文様の織りなす製作当初の華麗な趣致がよくうかがえる。
 なお本像は大正九年、仁和寺真乗院より移座された。

木造不動明王坐像

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