高野雑筆集 こうやざっぴつしゅう

歴史資料/書跡・典籍/古文書 その他 / 平安

  • 京都府
  • 平安 / 1171
  • 2帖
  • 京都府京都市下京区烏丸通七条上る常葉町754
  • 重文指定年月日:19880606
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 学校法人真宗大谷学園
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 『高野雑筆集』(二巻)は、空海の遺文を集めたもので、成立時期、編者等は未詳だが、『遍照発揮性霊集』の補遺にあたるものである。書簡類を中心に七二編を収め、うち十編は『性霊集』と重複し、また弟子等の書簡の混入した疑いのあるもの数編を含んでいる。その内容は、空海が唐より請来した経典等の書写、普及に関するものが多く、庇護者に対する物品の恵与の依頼状、礼状、病気見舞など多岐にわたり『性霊集』等とともに空海の事跡、思想等を知る上に重要な史料である。
 この大谷大学本は、その承安二年(一一七一)の写本で、粘葉装二帖からなる。各帖とも現状の表紙は本文料紙と共紙で、外題はなく、左上隅に小さく「高野雑筆集巻上(下)」と記されている。料紙は楮紙に押界七行を施して用い、各帖首に「高野雑筆集巻上(下)」と内題があり、本文は一行二〇~二四字に楷書で謹直に書写し、上帖に四〇編、下帖に三二編を収めている。おおむね一編ずつ行をかえているが、まま二~三編を改行せずに続けて書写している箇所もある。文中、朱の句切点があり、まれに朱仮名、上帖の首二丁に墨仮名、朱ヲコト点が付され、上欄外には「性霊集第三有之」などの注記が本文と同筆で加えられている。下帖には三二首の空海の文章に続けて、唐僧義空等に宛てた徐公直、雲叙等の書簡一八編を併せて書写している。
 各帖末に書写奥書があり、上帖は
 「承安元年六月六日書写了 一交了」
下帖は
 「承安元年六月八日於理趣院書写了、範杲本也/一交了」
とあり、承安元年に範杲が理趣院(勧修寺)で書写したものであることを明らかにしている。範杲は平安時代後期の勧修寺の僧で、その書写した本が高山寺に多く伝存しており、本帖も各帖首に「高山寺」の朱方印があり、高山寺に伝来したものである。本帖は『高野雑筆集』の現存最古本であり、空海の伝記研究上に、またわが国の漢文学史研究上に貴重である。

高野雑筆集

ページトップへ