秘密曼荼羅十住心論(巻第六補写) ひみつまんだらじゅうじゅうしんろん

歴史資料/書跡・典籍/古文書 その他 / 平安

  • 平安
  • 10帖
  • 重文指定年月日:19900629
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 仁和寺
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 『秘密曼荼羅十住心論』(十巻)は、弘法大師空海の著作で、天長年間(八二四-三四)の撰述になり、人間の宗教意識を異生羝羊住心【いしようていようじゆうしん】から秘密荘厳住心【ひみつしようごんじゆうしん】までの十の段階(住心)に分け、真言宗の奥義を説いている。本書を要略した『秘蔵宝鑰【ひぞうほうやく】』(三巻)とともに空海の思想を集大成した代表的著作とされている。
 仁和寺本は、巻第六が江戸時代の補写になるが、他の九帖は平安時代後期の写本で、体裁はもと巻子装を半葉五行の折本装に改装したもので、紺紙の旧表紙に「十住心論巻第『幾』と外題を金字で書いている。料紙は黄蘖染の楮紙に墨界を施して用い、各帖とも首題、尾題を「秘密曼(漫とするものもあり)荼羅十住心論巻第『幾』」と存している。本文は各帖筆跡が異なる寄合書であるが、巻第七、八、九の三巻は同一人の筆になるものと認められる。いずれも一行一五ないし二〇字前後に端正に書写している。文中、後筆の墨書による仮名、校異、後筆朱書の返点、声点、注記等が書き込まれている。各帖の末には「承安二年三月三十日書写畢、二校了」(巻第一)のように承安二年(一一七二)および同四年の書写奥書がある。この奥書は各帖同筆と認められ、全十巻を書写せしめて校合に際して付けられたものと考えられるが、なお検討を要する。また各帖、朱書の永正六年(一五〇九)加点奥書があり、この本が一時堺(境)の常楽寺に伝来したことを明らかにしている。
 『秘密曼荼羅十住心論』は鎌倉時代以来、高野版が流布したためか、古写本は多くなく、その中でこの仁和寺本は書写年時を明らかにするまとまった平安時代古写本として、日本仏教史研究上に貴重である。

秘密曼荼羅十住心論(巻第六補写)

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