現存最古の戸籍として著名なものである。料紙は淡墨界を施した穀紙を用い、本文は現存四十二行、前戸条の戸口数の合計記事の途中より川邊勝法師の戸の大半を存している(大日本古文書一-一三九頁所収)。字面には豊前国印十四顆が捺され、継目裏には「豊前国仲津郡丁里太【(ママ)】宝二年藉」の墨書と同国印一顆(印影半存)がある。第一紙端裏にも継目印と思われる国印の印廓の印影がみえるから第一紙は一行程度を欠しているものと認められる。本幅の背は東大寺写経所の検受疏目録断簡(大日本古文書二四-三八〇頁所収)で、今日正倉院以外に伝存する大宝二年戸籍断簡三通のうちの一つとして貴重である。