理趣経種子曼荼羅 りしゅきょうしゅじまんだら

歴史資料/書跡・典籍/古文書 その他 / 平安

  • 東京都
  • 平安
  • 1巻
  • 東京都千代田区丸の内3-1-1
  • 重文指定年月日:20001204
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 公益財団法人出光美術館
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 理趣経は大日経、金剛頂経とともに真言密教の根本経典の一つとされるものである。空海が主として不空訳「大楽金剛不空真実三摩耶経般若波羅蜜多理趣品」を依用したので、真言宗の最も重要な経典として、今日に至るまで読誦されている。
 本巻は、この理趣経の説く世界を種子曼荼羅によって表現したもので、類例稀な梵書の作品である。体裁は巻子装で、表紙には江戸時代の間似合紙を用い、外題を「種子勝覚筆」と墨書する。外題下に蓮形の朱印が捺されている。この朱印は、東寺観智院において江戸時代の整理時に使用されたもので、墨書から第二百九函に納められていたことが知られる。料紙には、双鳳凰丸瓜唐草文を雲母刷りした美麗な唐紙【からかみ】を用いている。
 巻頭に墨書が認められるものの、判読しがたい。次に、単音節の梵字【ぼんじ】により諸尊を象徴する種子を墨書する。金剛薩〓以下の単独種子がみられる。尊名は記されていない。いずれも諸尊を象徴する種子で、理趣経曼荼羅の主尊種子であることが確認できる。続いて「胎蔵界八葉」「金剛界五佛」の種子を書写する。これら種子の配列は、仁海【にんがい】(九五五-一〇四六)の理趣経十八会曼荼羅(『大蔵経』図像第五巻)に似ているが、本巻には第十六段の五部の主尊種子がなく、金剛界五仏を最初ではなく最後に配するところが相違する。このように、本巻はすべての尊格を種子で表現している種子曼荼羅であり、真言宗で日常に読誦する理趣経を表現しているものである。
 奥書から、本巻は勝覚【しょうかく】自筆であることが知られる。曲線を生かした書体や運筆には抑揚があり、仮名書の筆致に通じるのびやかな書法である。勝覚(一〇五七-一一二九)は堀川左大臣源俊房の子で、応徳三年(一〇八六)に醍醐寺第一四世座主となり、永久三年(一一一五)に三宝院を創建した人物である。また、巻末の延享三年(一七四六)賢賀奥書から、本巻は東寺観智院の金剛蔵に秘蔵されたことを確かめられる。

理趣経種子曼荼羅

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