菊花文三耳壺〈丹波/〉 きっかもんさんじこ たんば

工芸品 / 鎌倉

  • 愛知県
  • 鎌倉 / 1201-1300
  • 肩の方に耳をつけた丹波の三耳壺である。素地は長石や珪石の細粒を含んだ灰白色を呈する稠密な陶胎をなし、器表は明るい褐色を呈する。紐造り後、轆轤調整する。胴は長胴で緩やかに肩が張る。口頸部はやや長く、外反して立ち上がり、上端部を平らに仕上げる。肩の三方には二本の粘土紐を合わせた横耳を貼りつける。胴下半はやや丸みをもってすぼまり、胴裾には篦削り調整を施す。底は平底とする。
     肩から胴上部には篦彫りで文様を施す。文様は三方の耳の間には三枚重ねの半截した菊花文を描き、それぞれその菊花中央には二枚の、両側には一枚(一部は二枚)の葉文を配し、中央の葉文と両側の接する葉文の間にはそれぞれ草花を表す。肩の口頸部との境には全周にわたり菊座風に花弁を廻らす。口頸部から肩には濃緑色の自然釉が掛かる。
  • 高30.0 口径9.9 銅径20.7 底径8.6 (㎝)
  • 1口
  • 愛知県陶磁美術館 愛知県瀬戸市南山口町234
  • 重文指定年月日:20050609
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 国宝・重要文化財(美術品)

兵庫県篠山市に所在する中世を代表する窯業地の一つである丹波窯の作品である。本三耳壺は、東海地方の作品とは口辺の仕上げが異なり、端部を平坦にして面を作り出す点はやや後出的な要素である。また、丹波窯では室町時代まで粘土紐による耳が残るが、全体がやや小さく空間をほとんど有しない耳の形態も同じく後出的な要素である。先の三本峠北窯の操業年代やこれらの点などから、本作品の製作時期は13世紀初めに考えられる。
 本壺は、肩から胴上部に菊花文が篦彫りでくっきりと描かれ、全体にほぼ欠けるところなく器形も整った形姿を見せる。平安時代後期(一二世紀)に比定される国宝・秋草文壺(渥美窯、慶應義塾所蔵)や重文・渥美灰釉芦鷺文三耳壺(愛知県陶磁資料館所蔵)などに続く、鎌倉時代の陶器を代表する優品である。

菊花文三耳壺〈丹波/〉

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