S55-05-024安国寺[[甕棺墓群]かめかんぼぐん].txt: 福岡県南部、筑後平野を流れる筑後川は、高良山神籠石のある高良山の麓をすぎて流れを西から南に変える。このあたり、高良山の北方約2キロメートルの筑後川の南岸で発掘された弥生時代の遺跡が安国寺遺跡である。この遺跡は筑後川の自然堤防状をなす標高約10メートルの河川より若干高い平地にある。この地域の区画整理事業に伴い昭和53年に久留米市教育委員会が発掘調査してその内容を明らかにしたものである。遺跡は東西約60メートル、南北約90メートルのほぼ楕円形に広がっている。調査地で検出された遺構は、甕棺墓65基、土〓(*1)墓4基、竪穴4基、祭祀遺構10か所である。甕棺墓は、弥生時代中期を中心とし、2例の石蓋甕棺以外は合せ甕棺である。また祭祀遺構は多量の丹塗り土器がすてられた土坑状のもので、その内から筒形土器、開口・短頚・無頚の壺形土器、甕、高坏鉢形土器などのあざやかな丹彩の土器がセットで検出されている。祭祀用の土坑は、一部の甕棺墓をとり囲んでいるようにも観察されている。ここから出土した100個に及ぶ丹彩土器は甕棺墓地における祭祀の状況を生き生きとうかがわせるものである。
この甕棺墓地はその範囲が限定され、おそらく全体で300基前後の基数であろうと推定されており、祭祀遺構も数地点の存在が確認されている。このように九州における弥生時代の独特の墓制である甕棺墓とそれに伴う祭祀とその祭祀用土器の実態が判明したことは、弥生時代の墓制を知る上で極めて重要なものといえよう。また甕棺墓地としてもその全体が把握された典型的なもので、学術上も重要なものであり、指定して保存を図るものである。