明治13年(1880)、駐伊特命全権公使としてイタリアに赴任した11代鍋島直大に、書記官として随行した百武兼行が描いた大礼服姿の直大像。画面右下の年記・署名、また「公使閣下大礼服ノ真像本年百武書記官ヲ暇毎ニ丹精ヲ凝シテ揮写セラレシ一大額ヲ掲ク」との記述(『集書』「公使館舞會ノ概略」)から、百武が公務の合間をぬって描いたことが分かる。額には鍋島家の家紋である杏葉紋と、日本列島・イタリア半島が彫り込まれている。百武は直大夫人の栄子像も描いたが、現存するのは百武筆の額を転用した高木背水筆の栄子像である。