宝冠をいただき、長身の体躯に衲衣をまとって直立する男神像で、簡潔な表現のうちに清明な趣きをたたえ、他に類例の少ない像容を示している。像の正面と台座に刻銘があり、この像が立山の神体として寛喜二年(一二三〇)三月越中新川郡の一寺で鋳造されたことが知られる。像は、両手の肩から先を別鋳、アリ〓立【ほぞだて】とするほかは、頭躰部を一瀉【いつしや】に鋳成し、表面は大方タガネ仕上げとする。鎌倉時代の在銘鋳銅像としては古く、しかも当代盛行の善光寺式阿弥陀像とは別種の作風が注目される。中世の立山信仰を物語る遺品としても貴重である。