檜材、寄木造、玉眼嵌入の像で、頭・体の根幹部は正中線及び体側中央で矧合せた四材から構成される。堂々たる正面観を示し、体勢も自然で、また衣褶には自然らしさを失うことなく巧みに装飾的効果があらわされている。その面貌の穏やかな中に厳しさを宿すあたり、いかにも鎌倉盛時の風とみられるが、当代の慶派の作品にみられるような抑揚の強い眉目の刻みと比べれば、かなり異質な点が注意される。総じて本像の作風には鎌倉期の新しい写実性が顕著であるが、そこには前代以来の穏健なまとまりを旨とする風をものこしており、作者はおそらく都の正統を継ぐ仏師と考えられる。当代前半の京都仏師の作風を示す数少ない優品として貴重である。