唐物茄子茶入(紹鴎・一名みをつくし) からものなすちゃいれ(じょうおう・いちめいみをつくし)

工芸品 /  

  • 大阪府
  • 南宋-元
  • 素地は鉄分を含んだ細密な褐色陶胎をなし、薄く轆轤成形する。形態は胴が張ったいわゆる茄子形茶入で、底は平底とし、細かい糸切りを残す。胴はきわめて薄く挽き出し、下部には沈線を一条廻らす。口は小さく口辺を強く外反させ口端を丸く捻り返す。口辺の内面から胴部には全体にやや紫がかった飴色の鉄釉を掛けるが、胴裾から底は土見せとする。肩先から裾にかけて三筋の釉がなだれかかり、端には丸い釉抜けがある。
  • 高6.0 口径2.7 胴径6.3 底径2.7(㎝)
  • 1口
  • 公益財団法人湯木美術館 大阪府大阪市中央区平野町3-3-9
  • 重文指定年月日:19980630
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 公益財団法人湯木美術館
  • 国宝・重要文化財(美術品)

唐物茄子茶入では、本茄子茶入が百貫茄子(似たり茄子)、付藻茄子(静嘉堂蔵)、珠光茄子とともに天下の四茄子茶入と称され、『山上宗二記』では茄子茶入の筆頭に挙げられる大名物である。もと松本珠報所持と伝えられ、鳥居引拙、武野紹鴎、今井宗久、織田信長、豊臣秀吉、徳川家光、東本願寺、閑事庵宗信(坂本周斎)などを、付属の茶入袋・挽家・四方盆・牙蓋・書状を伴いながら伝来し、茶道具における唐物茶入のあり方を如実に示す貴重な遺例の一つである。茶会記の記録には天文十八年(一五四九)二月十三日の武野紹鴎茶会をはじめとし、天正十五年(一五八七)の北野大茶之湯など数多く用いられている。
 本茶入は、総体に掛かる飴色の鉄釉に、一方の肩先から裾にかけてやや白濁する三筋の釉がなだれかかり、その様子が澪標に似ているところから武野紹鴎が底に「見本徒久志」と墨書したとされる。紹鴎が所持したことから「紹鴎茄子」と呼ばれるが、底の墨書から「みをつくし」とも呼ばれる。
 本作品は、大きさはやや小振りながら、形は端正な形姿を示し、総体に掛かる飴色の鉄釉はむらなく均一に深く掛かり、一方には三筋の白濁した釉が流れてみごとな釉景色を作りだす。唐物茄子茶入を代表する作行優れた作品である。
 付属する茶入袋には正法寺緞子と紹鴎間道、挽家の蓋には他に類例がみられない椰子を用いる。四方盆は唐物若狭盆で、紹鴎好みと利休好みの象牙蓋が添う。小堀遠州書状は、江月宗玩に挽家の箱に銘を依頼する書状である。いずれも本茶入の格別の扱いを示す資料として貴重である。

唐物茄子茶入(紹鴎・一名みをつくし)

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