この芸能は、長野県下伊那郡天竜村坂部の諏訪神社の祭(一月四、五日)に行なわれる湯立神楽の一種で、同社拝殿に炉をきり、釜をすえ、湯をたぎらせたそのまわりで演じられる。
芸能次第としては「座固め」「しめひき」「ごしろわたし」 「順の舞」などの前行事があり、大庭酒【おにわざけ】の後、「申し上げ」「湯ばらい」「湯立」となる。湯立は、禰宜が神楽歌を歌いながら釜のまわりをまわり、湯たぶさで湯をかきまわしてはね上げる。続いて少年の行なう「花の舞」、青年の行なう「本舞」などがくりかえし舞われ、夜明け近いころに面をつけた「タイキリ」、「獅子」、「鬼」などがつぎつぎに出て舞う。
湯立はすがすがしく古風であり、面形の舞は猿楽、田楽をしのばせる芸能要素を含むなど、芸能史的にもきわめて重要なものである。また、近隣三河の花祭などにも通じる要素を持っているなど、地方的・流派的にも特色あるものである。