木造舞楽面 もくぞうぶがくめん

彫刻 / 鎌倉

  • 鎌倉
  • 2面
  • 重文指定年月日:20001204
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 瀬戸神社
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 源頼朝が伊豆・三島明神を勧請して創建したと伝えられる瀬戸神社に伝わる抜頭と陵王の舞楽面である。
 抜頭面は蓬髪で、瞋目して眉根を寄せ、鷲鼻、開口、上下歯列を出す。陵王面は頭上を龍が跨る。本面は瞋目し動眼とし、顔中に皺を表し、眉毛と口髭を植毛し(亡失)、四本の長い上歯列を出す。下顎は吊顎とする(亡失)。
 ともにヒノキ材製で、抜頭は口の位置で水平に上下二材に矧ぎ、目と鼻孔を刳り抜く。表裏面とも布張り、錆下地とし、表面は肉身部朱彩、眉・目に黒漆、裏面は黒漆塗りとする。一方の陵王は、龍の頭髪先端から下肢半ばに至る位置で前後に材を寄せ、前部は龍の両前肢上膊半ばから本面の両頬外側の位置で左右に三材を矧ぎ、後部は正中で左右に二材を矧ぐ。表裏面とも布張り、錆下地で、表面は漆箔、裏は茶色の漆を塗る。
 抜頭面は一般的には、頭髪を数列に植毛し、頭の鉢が大きく、鼻先が嘴状に尖るのが普通だが、本面は頭髪植毛が一列(亡失)、頭の鉢が小さく、鼻先が丸いという異形を示す。もっともこの形は奈良・丹生神社面などに類例があり、決して孤立した作品ではない。大掴みな肉取り、力強い表情などから、鎌倉時代初めの作と認められる。下顎を別材(横木)矧ぎとするところは、舞楽面にはあまりない構造だが、そこに仏師の仕口を見ることも可能であろう。
 一方の陵王面は、頭上に乗る龍が身を低く構える形式で、狛近真の『教訓抄』に記される、この面にある二様のうち一方に当たる可能性がある。この形式の面は他に神奈川・鶴岡八幡宮、奈良・氷室神社(ともに重文)にあり、特に鶴岡八幡宮面とは大きさや形式とも極めて類似しており、同時期、同作と見ることができよう。このように、両面とも形式上は稀少の例だが、出来は優れている。
 抜頭裏面に、本面の施入と、夢想によって運慶法印が自ら彫刻した旨および建保□年(千支から建保七年〈一二一九〉)の年記が記されているが、銘に削り取りが多く文意は必ずしも正確に捉えがたい。銘文中の運慶作のことなど検証すべき点があるので、現時点では強く主張すべきでないが、この面の作風は建保のころの製作として大過なく、鎌倉時代初めの貴重な遺品として評される。鶴岡八幡宮舞楽面とともに関東における本格的な仮面遺例としての意義は大きい。

木造舞楽面

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