木造千手観音立像 もくぞうせんじゅかんのんりゅうぞう

彫刻 / 鎌倉

  • 鎌倉
  • 1躯
  • 重文指定年月日:19860606
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 谷田寺
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 泰澄創建の伝えをもつ谷田寺【たんだいじ】の本尊である。
 十一面四十二臂の像は、要所を引きしめた張りのある肉取りで、均整よくまとめられる。力強い表情や、質感を意図した衣文表現などには見るべきものがあり、その製作は鎌倉初期彫刻がまだ類型化しない、十三世紀前半頃の、優れた仏師によるものとみられる。髪部等を除いて、素地に直接赤色系の染料を薄くかけた檀像風の仕上げは、本躰の明快な作風をより効果的にしている。
 榧材、寄木造、彫眼。頭躰幹部は前後二材矧、内刳りを施す。像内に当初の納入品とみられる千手観音摺仏(一八・五×一三・四センチ)があり、その一部を取り出したが年記、人名等を認めない。光背の左三分の二と、台座は当初のもので、全体に保存がよい。
 附の不動明王像は、檜材、前後二材矧、彫眼、彩色。毘沙門天像は左右二材矧、玉眼とし、構造が異なるものの、作風から二体一具同時の作とみられる。その作行きは千手観音像にやや劣るが、作風的には共通する点がある。作者を異にする当初からの三尊像、あるいは中尊造立後間もない頃に追加造立されたものであろう。なお、本寺所蔵の弘安十一年(一二八八)の文書には(『鎌倉遺文』一六四九七号)、本堂五間四面本尊千手の存在が記される。

木造千手観音立像

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