契沖著述稿本類 けいちゅうちょじゅつこうほんるい

歴史資料/書跡・典籍/古文書 その他 / 江戸

  • 江戸
  • 53種
  • 重文指定年月日:19880606
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 江戸時代前期の国学者で古典研究家として著名な契沖(一六四〇~一七一〇)が、その晩年に隠棲した大坂高津の円珠庵に伝来した著述稿本類である。
 契沖は摂津尼崎の生まれで十一歳で出家し、高野山に登り、大坂生玉の曼陀羅院、今里の妙法寺の住持となり、五十一歳の頃円珠庵に隠棲した。若くより下河辺長流との親交があり、万葉集研究に励み、徳川光圀の依頼で『万葉代匠記』を執筆した。隠棲後は、光圀の援助をうけて研究・著述に専念し、その学問は本居宣長等に多大な影響を与えた。
 契沖の全著作は四十四種を教えるが、このうち円珠庵にはその約三分の一にあたる十五種の稿本がまとまっている。そのうち『上万葉代匠記序』は、『万葉代匠記』の初稿本の自序で、序文のみではあるが、精撰本との異同があり注目される。百人一首の注釈書である『百人一首改観抄』は契沖の自筆本であり、また古今集の注釈書『古今余材鈔』、伊勢物語の注釈書『勢語臆断』は兄如水の筆になるが、いずれも契沖が傍に置いて書き入れを加えたものである。また、契沖が古典研究を契機に歴史的仮名遣いに着目し、その著作をまとめた『和学正濫要略』、古典に表れた名所を研究した『勝地吐懐編』などがあり、契沖の学問を示している。
 抜書・手沢本類は、契沖の著作の基礎となった日常の研究のあり方を伝えたものである。このうち『日本国現報善悪霊異記』は日本霊異記から十四ヶ条を抄出して関連記事を諸書から集めたもので、他書に見えない記事を含んでいる。その他『続日本紀要略』など六国史の抜書や、漢詩文、歌書、仏書からの抜書類がまとまっており、また『和歌三式』など契沖自筆の書入れ本や、『詞林采葉抄』のように徳川光圀から贈られた事実を伝える本もあって注目される。

契沖著述稿本類

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