絹本著色千手観音二十八部衆像 けんぽんちゃくしょくせんじゅかんのんにじゅうはちぶしゅうぞう

絵画 / 鎌倉

  • 鎌倉
  • 1幅
  • 重文指定年月日:19960627
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 天永寺護国院
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 千手観音の眷属【けんぞく】として二十八部衆を説いているのは伽梵達摩訳『千手千眼観世音菩薩広大円満無礙大悲心陀羅尼経【せんじゆせんげんかんぜおんぼさつこうだいえんまんむげだいひしんだらにきよう】』および善無畏訳『千手観音造次第法儀軌【せんじゆかんのんぞうしだいほうぎき】』で、後者には肉身の色および持物を記している。しかし、現存遺品では必ずしもこれと一致していない。『中右記』元永元年(一一一八)閏九月の条に、夢に補怛洛迦山【ほだらかせん】に居る千手観音二十八部衆の姿を見たという記述があり、このころには千手観音に二十八部衆をあわせて描いた作品が存在していたと推測できるが、遺品としては『別尊雑記』所収の白描図像や妙法院千手観音像納入品である版画などが古く、平安時代末期をさかのぼらない。本格的な画像遺例は、滋賀大清寺本や慈照院本など鎌倉時代後期以降の遺品が知られているばかりである。
 本図は観音を皆金色身の立像で表している。二十八部衆は大清寺本や禅林寺本と図様を共通させるものもあるが、本図像は象形が正確であるうえに彩色の美麗さで秀でており、服飾にはきわめて細緻に文様が描かれているなど見るべきものがある。丹を下地とした皆金色身の表現や、明度の高い朱や群青の使用、金泥による鳳凰文や波頭をモチーフにした丸文、さらに金泥の隈を多用した山岳表現など、鎌倉時代後期の仏画作品に流行した要素が反映されている。
 千手観音二十八部衆画像の遺例として、本図は制作期が古く、作行きが優秀で、全体に保存も良好であるというように高い価値を有している。

絹本著色千手観音二十八部衆像

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