像内納入品 ぞうないのうにゅうひん

彫刻 / 鎌倉

  • 鎌倉
  • 1躯
  • 重文指定年月日:19960627
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 西大寺
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 烏帽子を被り、狩衣を着け、左肩に大袋を背負って立つ大黒天像である。下ぶくれの福々しい顔立ちと肥満した体躯、丸みのある手足など、福神らしい親しみやすい姿が堅実な彫技で表されている。頭体幹部を通して前後二材より造り、両肩外側部ほかに別材を矧ぎ付けている。表面彩色は大半が剥落し素地を表している。
 像内には版本法華経(一部八巻)四帖、版本大般若経理趣分一帖、諸尊種字曼荼羅一巻、木製五輪塔一基、木造大黒天半跏像(曲物笥入)一躯、弁才天懸仏(同)一面が納められていた。このうち大般若経理趣分には建長七年(一二五五)、印玄の刊記がある。印玄の名は奈良・元興寺聖徳太子立像(重要文化財 文永五年=一二六八)納入品の結縁交名中に見える。『興正菩薩行実年譜』によれば建治二年(一二七六)、大黒天の霊験を感得した西大寺中興の祖、叡尊が仏工善春にその像を造らせ、浄廚に安置したという。本像はこれに当たる可能性が高い。善春は元興寺聖徳太子像や西大寺興正菩薩坐像(重要文化財 弘安三年=一二八〇)の作者として知られる仏師である。
 納入品のうち総高五・三センチの大黒天像は当代木彫の技巧を如実に示す遺品である。懸仏は鍍錫した銅板に金銅製半肉彫の二臂琵琶弾奏形の弁才天坐像を付す。文永二年(一二六六)銘の鶴岡八幡宮像(重要文化財)とともにこのタイプの弁才天像の古例として注目され、これも叡尊の弁才天信仰との関わりが想定される。これらの納入品の有する意義は本体に勝るとも劣らぬものがある。

像内納入品

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