耳付花生(寿老人)〈伊賀/〉
みみつきはないけ(じゅろうじん)
工芸品 / 安土・桃山
- 大阪府
-
桃山
- 素地は灰白色の半磁質胎をなし、厚手に紐造りで成形し、高火度で焼き締める。底は厚い円座状の平底とし外に突出する。胴部は肩から胴裾にいたるまで撫四方とし、篦削りや篦彫りを施す。口は外に開き口辺を平らに仕上げ撫四方とし、すぼまった頸の付け根には凸帯を一条廻らす。肩は緩く傾斜し左右には垂れぎみの耳を付ける。
胴には一方に赤い焦げが丸く現れ、口辺から肩や胴まで淡緑色の自然釉が薄く掛かり、黒褐色の鉄釉が流れる。他方はむらに黒く焼け焦げ、胴には全体に自然釉が厚く掛かり、一部は青緑色を呈している。頸の付け根には鐶付穴を埋めた跡がある。
- 高28.9 口径11.9 胴径12.7 底径12.5(㎝)
- 1口
- 大阪市都島区網島町10-32
- 重文指定年月日:19980630
国宝指定年月日:
登録年月日:
- 公益財団法人藤田美術館
- 国宝・重要文化財(美術品)
本花生は、緩やかな肩の左右に垂れぎみの独特の耳を付けるが、「寿老人」の銘はこの耳にちなんでのものと思われる。本作品は既存の花生とは作行が異なり、撫四方にした作振り、篦削りや篦彫りも他に比して控えめで類例のない作である。高火度焼成による黒い焼け焦げと淡緑色の自然釉に赤い焦げが現れ、伊賀ならではの釉景色をみごとに作りだし、控えめの作為により素朴で壮健な作行を示す伊賀花生を代表する作品である。