選択本願念仏集 せんじゃくほんがんねんぶつしゅう

歴史資料/書跡・典籍/古文書 その他 / 鎌倉

  • 京都府
  • 鎌倉
  • 1冊
  • 京都府京都市下京区烏丸通七条上る常葉町754
  • 重文指定年月日:19990607
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 学校法人真宗大谷学園
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 『選択本願念仏集』は浄土宗の開祖法然房源空(一一三三-一二一二年)の撰にかかり、九条兼実の懇請によって作ることになったものといわれている。浄土教学上の最重要な宗典で、その内容は『三部経釈』や『逆修説法』と密接に関係しており、他力本願を主張し、念仏門こそは末法の世にふさわしい法門であることを示そうとしたものである。その成立時期については異説もあるが、多くは建久九年(一一九八)三月とする。
 諸本には、本書以外に源空生存中の写本で現存最古写本である京都盧山寺蔵の草稿本(重文)と奈良奥院蔵の元久二年の奥書をもつ往生院本(重文)がある。また、版本では往生院本を底本とした法然院蔵の延応版、平基親序を有する建暦版などがある。
 本書の体裁は袋綴装冊子本で、表紙に新補濃緑地唐花菱繋文紗を付している。原表紙は共紙で、外題を「選擇本願念佛集」、左下に「東第十四箱」と墨書している。これは高山寺の子院方便智院経庫の箱番号であり、本書の伝来経緯を示す貴重な墨書である。見返しに朱複郭長方印「十無盡院」が捺されている。本文料紙には楮紙を用い、半葉一四行前後、一行二一字ないし二二字に書写されている。第一・二紙目のみに押界が施されている。また、第一紙右下の切り取られた部分に朱方印跡が認められる。本文は首題「選擇本願念佛集」から尾題「選択本願念佛集」まで完存し、一六章段から構成されている。各章は篇目、引文、私釈からなり、篇目と私釈は一字下げとなっている。本文は行書または草書体で草卒に書写され、まま墨仮名・校異が加えられている。これらはいずれも筆跡・墨色などにより書写当初に加えられたものと認められる。内容的には往生院本系統に属する。
 朱書奥書と本文とは異筆であるが、この奥書と朱校合は同筆である。朱書で巻頭部分の「往生之業/念佛為先」の「先」を『本 艸本』と校合しているところは、校合本の系統を明らかにするうえで注目される。末尾の承元二年(一二〇八)二月の奥書によれば、「佐法印」から「暁」が本書を伝領したもので、校合には「大谷寺御留(宿カ)之艸本」を用いていることが知られる。
 本書は、大型料紙を用い、書風や墨仮名などからみて鎌倉時代中期を降らない書写本として認められる。また、建暦二年(一二一二)に明恵房高弁(一一七三-一二三二年)が『選択集』への弁駁を著述した『摧邪輪』に用いた本と推測できる点でも貴重である。
 この大谷本は、浄土宗の開祖源空の草本で校合した姿を伝え、高山寺伝来の鎌倉時代古写本として、日本仏教史上においてきわめて価値の高いものである。

選択本願念仏集

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