歎異抄 たんにしょう

歴史資料/書跡・典籍/古文書 その他 / 室町

  • 室町
  • 2巻
  • 重文指定年月日:20000627
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 本願寺
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 『歎異抄』は、親鸞【しんらん】(一一七三-一二六二年)の直弟子常陸国河和田村住の唯円【ゆいえん】(一二二二-八九年)の著述書である。序文によれば、親鸞没後に、その所説でない異義を広める者が多く、他力の信心を乱す者があるので、直接親鸞から聞いたところに基づいて異義を批判して、真実の信心を明らかにしようとしたものである。
 内容は、前半一〇章の師訓篇と後半八章の異義篇からなり、師訓篇は親鸞の法語を抄出し、異義篇は唯円が見聞した異義を歎き、批判している。師訓篇第三章には、「善人ナヲモテ往生ヲトク、イハンヤ悪人ヲヤ」で著名な悪人正機説がみられる。その成立時期は、親鸞没後二〇-三〇年後の鎌倉時代中期ころと推定されているが、原本は不明である。
 『歎異抄』の写本は法然一門の流罪記録の有無によって二系統に大別される。流罪記録のある永正十六年(一五一九)書写の端ノ坊本(真宗大谷学園蔵)と、流罪記録のない永正十三年書写の専精寺本などが知られる。本書は諸写本中の現存最古写本で、端ノ坊本の親本にあたる。
 本書は現在上・下巻からなる巻子装であるが、料紙の綴穴跡などから、本来は袋綴装冊子本であったことが知られる。本文料紙には楮紙を用い、半葉六行に楷書にて書写されている。本文は片仮名交り文にて、まま漢字に墨振仮名を施している。首題「歎異抄」から始まり、「ナツケテ歎異抄トイフヘシ、外見アルヘカス、ト」までの本文と、法然・親鸞等の流罪に関する記録および奥書を完存している。上巻には一八章中の一三章が、下巻には残りの五章および流罪記録が収められている。上巻の巻頭には、見返の白紙があり、次いで「歎異抄一通」(中央)、「蓮如之」(右下)と墨書する原表紙がある。外題の「一通」は追筆である。下巻の本文と流罪記録との間には白紙が入っている。流罪記録の内容は、親鸞についての記載等からみて、浄土真宗にふさわしいものになっている。下巻の巻末には、本願寺第八世蓮如【れんにょ】(一四一五-九九年)自筆にて「右斯聖教者、為當流大事聖教也、於無宿善機、無左右不可許之者也、釈蓮如(花押)」との奥書がある。書写年代はないものの、蓮如の花押の形態、書風などからみて、室町時代中期に書写されたと考えられている。

歎異抄

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