天理大学本は体裁が桝型粘葉本で、料紙共紙の左肩に題簽外題を付すが、見返八双部分の痕跡から、もとは具引唐紙を装していたとみられる。見返には別筆で本書の所載人数表記を朱書している。
料紙は楮紙打紙に押界を施し、半葉七行、一行一一から一三字前後にやや速筆の真名をもって書写する。本文は首題以下尾題にいたる四二話、四五人の往生伝を完存する。本文の構成は群書類従本系と同一であるが、一部に類従本の脱を補うほか、前田家本などの誤りをただす点も少なくなく、全文にわたって朱傍訓、送仮名、声点が稠密に付されている。
巻末の奥書によれば、本書は応徳三年(一〇八六)八月九日、後に天台座主となった仁豪が念仏修行のため比叡山の自房において書写し、同二九日に加点したことが知られ、成立後およそ一世紀を経て書写された現存最古の写本である。