仏涅槃図は、釈尊が跋提の河のほとりにある沙羅双樹の間で入滅する情景を描いたもので、古くから諸寺院の涅槃会に懸用されてきた。
本図は、通途の仏涅槃図の形式によって描かれているが、疎ならざる構図、鮮麗な賦彩雄渾な筆致には目を見はるものがあり、鎌倉時代仏画の特色を顕著に示すとともに、当初の描表装を備えている点も貴ばれ、当代仏涅槃図の典型的一作として推賞される。
なお本図はもと河内国若江郡某寺(画中銘札)に伝わり、故あって寛正三年(一四六三)六月山城国相楽郡賀茂庄の興法院(東明寺別院)へ施入されたことが裏書によって知られ、のちいまの常念寺の有に帰したものである。