絵画 / 鎌倉
涅槃図はその作例がきわめて多いが、本図は世間に流布する涅槃図の周縁に、涅槃に関係ある諸説法を描いている点に特色がある。いまその説法の一々を明らかにしがたいが、左右及び下縁を十六齣【こま】に分け、その中に純陀【じゆんだ】供養、迦葉【かしよう】遅参、摩耶夫人【まやぶにん】下降、再生説法、分舎利などの諸場面を描いていることがわかる。涅槃図には釈迦八相や涅槃八相をめぐらす一系統があるが、本図のように多数場面を描いた例はなく、軸内の文永十一年(一二七四)の年記とともに、鎌倉後期涅槃図の貴重な遺例である。
絹本著色八相涅槃図
絹本著色仏涅槃図〈周四郎筆/〉
周四郎
絹本著色仏涅槃図