浄瑠璃寺三重塔(九体寺三重塔) 一基
この三重塔は治承二年(一一七八)に京都一条大宮から移建したものであって、したがって建立年代は平安時代に遡るものと考えられる。移建後の沿革については露盤銘により正応五年(―二九二)に修理の施されたことが知られる。三間三重、木割の細い塔婆で、各重とも三手先組をもって深い軒を支え、勾配の緩い垂木や檜皮葺の屋根は真反の軒とともに気品のある軽快な意匠を作っている。細部には鎌倉時代の補修がみられるが、組物や垂木及び軒の構造には藤原時代の様式がうかがわれる。以上のようにこの塔は平安時代における三重塔として優れた遺構であるが、さらに初重内部には極彩色が施してあり、平安時代の装飾絵画を知る上でよい資料となっている。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)