木造阿弥陀如来及四菩薩坐像(堂行堂安置)

彫刻 / 平安 室町 鎌倉 南北朝

  • 平安~鎌倉~室町
  • 5躯
  • 重文指定年月日:20000627
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 輪王寺
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 輪王寺常行堂(重文)の本尊、阿弥陀五尊像である。同堂は久安元年(一一四五)に創建され、比叡山の行法を移して常行三昧の勤修が始められたと伝える。保元三年(一一五八)の寺蔵文書により同時点での存在が確かめられ、それによれば「本寺(比叡山)常行堂を模して」建てられたという。本一具は、中尊の宝冠(後補)をいただく像容や、周囲に法・利・因・語の四菩薩を配する五尊の構成が『覚禅鈔』に記される比叡山常行堂の本尊像と一致する。
 いずれもヒノキ材製、漆箔仕上げ(後補)。阿弥陀如来像は頭部の全ておよび体幹部前半を通して一材より彫出、体部を背面より内刳、割首を行ったうえ、頭部を前後に割って内刳を施す。体部は前半材と背板材(地付まで達する)の間に左右二材(上背部を形成し、右方分は地付まで達する)を挟む。両肩外側部(各一材製)、両足部(横一材製)等に別材を矧ぐ。定朝様に則った温雅な作風を示し、久安元年の造立とみて誤りないであろう。髻を結って大衣を通肩に着け、衣を通して胸腹の起伏を表すなどの特徴は円仁請来の金剛界八十一尊曼荼羅中の無量寿如来に通じ、比叡山常行堂本尊の姿を伝えるものともみられる。同様の特徴をもつ宝冠阿弥陀像は十数例知られるが、本像はその平安時代に遡る例として貴重である。なお像内に文永十二年(一二七五)から享禄三年(一五三〇)まで四回分の修理銘が記されている。
 四菩薩はいずれも頭体幹部を一材より彫出して前後に割り矧ぐ構造になる。金剛法・金剛利菩薩は藤原風を襲いながらも意志的な表情や引き締まった肉付け、起伏のある衣文の彫法に鎌倉時代の作風がうかがえる。金剛語菩薩は全体に四角張った立体把握や、面貌および衣文の癖の強い表現から、中尊の修理銘にある応永二十五年(一四一八)ころの院派仏師による作とみられる。金剛因菩薩はさらに降って像内銘にある享禄五年(一五三二)を製作年とみるべきであろう。
 このように四菩薩が後補に替わっているとはいえ、罹災の度に亡失分を補って今日、五尊一具が伝存することの意義は大きい。円仁創建の比叡山東常行堂以来、各地で造り継がれていた常行堂本尊像の、最も正統的な姿を伝える遺品といえよう。

木造阿弥陀如来及四菩薩坐像(堂行堂安置)

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