撞座は簡素な蓮華形で、その鐘身における位置は後世のものに比して高い。竜頭の方向とその位置は直交して古式である。笠形は二条の圏縁を笠形と同心円にめぐらし、上下二段に分けている。乳は簡単な円錐形頭円筒形。口縁部は二条の圏縁のみめぐらして駒の爪をつくらない等から、奈良梵鐘の形式を踏むが、寺伝によると宝亀八年(七七七)小野時兼の寄進といい、一条天皇よりは龍寿鐘殿の勅額を賜わって、霊鐘として尊崇された。竜頭を白布で巻いて人の目にふれさせなかったのは、竜神すなわち雨神としての霊験あらたかということからであった。