三扇の中央に釈迦如来とそれを囲繞する多くの菩薩、上の区画に仏伝・本生譚、下の区画に音声菩薩をあらわし、各扇の前面に宝樹を当てる。いずれも白檀材で微小に彫刻し箱形の中に入れ、各区画の境に多種の珠玉を嵌める。このような小型の龕像は中国唐代に盛んに行われ、遺品も少なくないが、本品は三扇が完備し、失われやすい前面宝樹も残っているなど保存状態のよいことが賞される。多くの珠玉の使用などのことを考えると、この種の龕像がいっそう装飾的に展開した時代を反映する。我が国で行われた厨子入小檀像に与えた影響を示す好資料でもある。