「おもろ」とは、胸中の思いを神に述べる意味で、『おもろさうし』はそうした古来沖縄の島々村々で謡われていた歌謡を採録した冊子である。集録は嘉靖十年(一五三一)、万暦四十一年(一六一三)、天啓三年(一六二三)の三回にわたってなされ、総計一五五四首(うち三〇六首重複)を収め、沖縄の万葉集ともいわれている。この県立博物館本は、康煕四十九年(一七一〇)頃に写された現存唯一の古本で、「おもろ」の姿を忠実に伝え、沖縄文化史上最も貴重な文化財である。長らく首里王家に伝来し、戦後一時米国に流出したが、昭和二十八年に『混効験集』らとともに返還された。