木造真教坐像 もくぞうしんきょうざぞう

彫刻 / 鎌倉

  • 神奈川県
  • 鎌倉/1318
  • 1躯
  • 神奈川県横浜市中区仲町通5-60
  • 重文指定年月日:20050609
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 蓮台寺
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 遊行上人一遍を継いで時衆教団を大成した遊行二祖真教【しんきょう】(一二三七~一三一九)の肖像彫刻である。法衣の上に環佩のない簡素な袈裟をまとい、胸前で持物(未開敷蓮華)を挟んで合掌(前方に傾ける)し坐す時宗祖師通途の姿で表される等身大の大きさをなす。真教は、建治二年(一二七六)に九州遊行中の一遍と出会い入門して他阿弥陀仏の名を与えられ、一遍の全国遊行に従った。一遍示寂後、法灯を継ぎ後継者として北陸関東などを遊行し、相模国当麻の無量光寺で独住した。時宗教団の確立と発展に寄与し、無量光寺で入滅した。本像は、永仁五年(一二九七)に国府津の道場として真教によって開かれた蓮台寺に伝来する。最近の修理によって、頭部内に墨書で「南無阿弥陀仏」「文保二年二月十三日 御歳八十二」と銘文が記されており、八二歳の寿像であることがわかる。
 檜と思われる針葉樹材を用いて頭躰を別材から彫出する寄木造の構造になる。頭部は両耳後で前後に割矧ぎ、さらに両耳前で割矧ぎ、内刳のうえ玉眼を嵌入する。頭躰部は躰部襟際で矧ぐ。躰幹部は、両外側部を含め大略前後二列(内刳)からなり、これに腹部の出を形成する前後二列(内刳)を矧ぐ。両足部は大略前後三列(内刳)となる。躰部各部はさらに細かい材が矧ぎ合わされている。両手先は各一材製。表面は現状下地を現すが、肉身の白肉色、口唇の朱、法衣の黄、袈裟の茶色がわずかに残っている。
 晩年、病により右半分が歪んだ独特の面貌を的確な写実表現で表す。合掌して坐す体躯の表現は、簡潔ながら規則的にたたまれた膝前や両裾先の衣襞、あるいは奥行ある側面観に、安定感あるゆったりとした堅実な作風を示している。真教の肖像としてはほかに山梨・称願寺(重文)、京都・長楽寺(重文)、広島・常称寺、東京・法蓮寺など数例が知られる。称願寺像や常称寺像の面相部や着衣表現にやや形式的な理想化が認められるのに比べれば、本像は類例中最も真容にせまったものといえ、像主の風貌を写実的によくとらえた寿像であるといえよう。
 最近の修理によって後補の厚い彩色が取り除かれ、当初の彫刻面が現れ、両手を含めて本躰に後補部分はほとんどない。
 当代における時宗僧侶の肖像彫刻は相当数知られるが、製作年および像主名がわかる寿像は少なく、本像は最古例となり、肖像彫刻としての意義も高く、さらに真教巡教の道場に製作された本像は、時宗祖師への信仰を考える上にも貴重な一作といえる。

木造真教坐像

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