杭全神社の御田植は、豊作を祈願して、実際の稲作が始まる前に、あらかじめ稲作の様子を演じる民俗芸能である。神社拝殿の床を田にみたて、田を整えてから田植えまでを演じる。仮面を付けた者が中心になって進行することや稲の神とされる人形が登場することなどに特色がある。
杭全神社の御田植は、仮面を付けたシテと呼ばれる者や牛役、早乙女【さおとめ】など7名と唱えを受け持つ地方【じかた】とよばれる4、5名で行う。杭全神社拝殿の床を田にみたてて、田を整える『鍬【くわ】』、牛による田おこしの『唐鋤【からすき】』、田をならす『棒【ぼう】』、苗代に籾をまく『種蒔【たねまき】』、田植えにあたる『植付【うえつけ】』を演じる。最後の『植付』では、シテが箸で御飯を人形に食べさせる所作などを行った後に、早乙女達によって田植えの所作がある。
この御田植は、唱えやシテの所作、扮装などに能の強い影響をうかがわせ、また稲の神とされる人形が登場するなど貴重である。
(※解説は選択当時のものをもとにしています)