マン・レイはアメリカ南東部のフィラデルフィアに生まれました。写真家として良く知られていますが、写真だけでなく、絵画や版画、オブジェ、映画の制作など、様々な芸術活動に取り組みました。
《埃の培養》は、マン・レイと深い親交があったマルセル・デュシャンが制作中の作品(通称《大ガラス》)をマン・レイが撮影したものです。《大ガラス》の上には埃がたまっていて、表面を磨くのに使われた布切れや綿の詰めものも散らばっています。マン・レイには、この光景が非常に神秘的に見え、「まさにデュシャンの世界そのものだと思った」と後に語っています。
ちなみに、《大ガラス》はデュシャンのアトリエの窓近くに置かれておりましたが、彼の留守中にもその窓は開いたままになっていました。この不思議な光景は、偶然にできたものではなく、意図的に埃が作品に降り積もるようにして作られたものだと考えられています。