本件は、直面の舞手が鈴や御幣、剣などを手に持って舞う採物舞【とりものまい】を主体とする神楽で、10月8日の青井【あおい】阿蘇【あそ】神社祭礼の宵宮での奉納を皮切りに、約2ヶ月にわたり、人吉市及び球磨郡内各町村の神社祭礼で奉納される。
演目は17番が伝承され、舞手が獅子頭をつけて舞う「獅子」以外は、全て直面【ひためん】の採物舞である。17番のなかには球磨神楽にしか伝承されていない演目もある。各神社の拝殿を神楽奉納の場とし、太鼓、下部を刳った台状の板であるガクイタ(楽板)、笛の伴奏にあわせ、舞手は回って回り返し、足拍子を軽快に踏み、演目によっては跳躍する所作などを織り交ぜつつ舞う。演目により、一人舞、二人舞、三人舞、四人舞があり、舞手が複数の時には、横一列や縦一列に並んだり、向き合ったりする隊形移動や、対角線上の二人が場所を入れ替わるなどの動きをみせる。舞の途中に挿入される歌には、千載和歌集などからの古歌が多数引用されている。
本件は、ほぼすべての演目が直面の採物舞で、回って回り返す所作を基本とするが、足拍子を多く踏み、複数の舞人による演目では様々に隊形を変えて舞うなど芸態に特色がある。歌には古歌が多数引用され、球磨神楽独特の演目も伝承されている。
また、本件は九州地方に伝承される同種神楽との影響関係や、伝播、発展の過程を考える上で貴重な伝承であり、芸能の変遷の過程や地域的特色を示す重要な伝承である。
(※解説は指定当時のものをもとにしています)