福岡県福智町に所在する城山横穴群は,遠賀川(おんががわ)流域の上流に当たり,南北約360m,東西約100mにわたる独立丘陵上に造営されている。平成20~25年度に福智町教育委員会により実施された確認調査で,横穴墓222基,横穴墓に伴う墳丘12基,横穴式石室墳1基を良好な保存状態で確認した。九州内で200基を超える横穴墓群は4例しかないが,中でも当横穴群の密度は最も高い。当横穴群における横穴墓の初現は6世紀前半で,遠賀川流域の横穴墓としては最古段階のものとなる。築造のピークは6世紀末~7世紀初頭前後で,追葬は少なくとも7世紀後半まで行われている。また6世紀前半~中頃までは丘陵北部が築造の主体であったが,造墓数が増え始める6世紀後半から,丘陵南部まで横穴墓が展開する。このように,当横穴群は長期にわたって横穴墓が造営され,開始から終焉までの変遷過程を追うことができる貴重な事例である。
このように,城山横穴群は規模や密集度の点で全国的にも比肩する例は限られており,我が国を代表する横穴群として貴重な事例である。また,当該地域の歴史的特性を顕著に示すものとしても重要であることから,史跡に指定して保護を図るものである。