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URBAIN
Urban
1937年
油彩・麻布 72.5×233.5㎝
自由美術家協会第1回展に出品された《URBAIN》8点は、村井正誠が初めて世に問うた純粋抽象の連作であった。
歯切れのいい、打楽器の多重奏のような画面。だが、彼の戦後の抽象画の本領ともいうべき、モダーンな感覚主義の自在さをおもうとき、この作品には、いまだ作画上の試行錯誤や、生硬さが目につくであろう。
画面右半分、いかにも村井らしい黄・赤・青・緑・黒の、矩形を基調とする画面は、彼が1928ー32年の滞欧中に知ったモンドリアンの自由な解釈である。水平線と垂直線、そして三原色(と無彩色)のみから成る画面というモンドリアンの戒律は解かれて、そこでは、小さな矩形が白い地のうえを浮遊しはじめている。また、黒い長方形はコの字形に開かれて、いたるところで閉した形そのものが解体されつつあることにも注目したい。いっそうラディルなのが、左側の画面だ。そこでは、個々の色彩はもはや本当の意昧での「形」をもたず、ただ位置を示すだけである。そうした純粋な位置関係から、拡がりや、奥行や、緩やかな運動の感覚が、そして形の生成への期待や、あるいは消滅の余韻が生じているのである。