横山松三郎(1838~84)は幕末から明治時代前期にかけて活躍した職業写真家で、旧江戸城や壬申検査、ウィーン万国博覧会出品作品などの撮影を担ったことで知られる。
松三郎のもとにあった資料群は弟松蔵と養子の啓(慶)次郎に受け継がれた。本件は松蔵が晩年に身を寄せた高田家に伝来したもので、松三郎とその弟松蔵が撮影した写真ガラス原板を中心に、鶏卵紙写真、写真油絵類、写真石版、写真技術書などから構成される。幕末から明治時代初期にかけて活躍した職業写真家に関する資料がまとまって伝存するものは希有である。そのようななか本件は、松三郎の事績、習得した技術を明らかにし、写真史・科学技術史上に学術的価値が高い。