青方文書は、長崎県の上五島地方に平安時代以来居住した青方氏のもとに伝来した文書である。青方氏は、鎌倉時代初期に幕府御家人となった一族であり、江戸時代には五島藩の家老職を務めている。
本文書の内容は、青方氏一族の所領をめぐる訴訟に関するもの、異国警固番役に関するもの、対外交易に関するもの、国人一揆に関するもの、漁業や牧など生業に関するものなど多岐にわたる。この内、青方一族の訴訟に関わる文書には同時代の西国の武家文書には残存数が少ない訴陳状(訴訟の当事者各人の主張をまとめた文書)が多く含まれている点に特徴がある。また、対外交易に関するものとして、日本から中国大陸に向けて出発した貿易船が五島近海で遭難した際に略奪を受けた記録が存在し、ここから当時の主要な輸出品が判明する。
本文書は、青方氏一族の史料が鎌倉時代以降まとまって伝存し、豊富な内容を持つという点で価値が高く、西国武士研究や対外交易史研究上、たいへん重要なものである。