中山法華経寺文書は、日蓮の弟子富木常忍(法号日常、一二一六~九九)が開創した中山法華経寺に伝来した古文書である。
中世文書は、歴代の貫首が寺内の規則を記した置文や寺領に対する寄進状、安堵状、朱印状など中山法華経寺の寺院運営や寺領に関わる文書が中心である。この内、置文には聖教の護持が記載される。また、外護者であった千葉氏による所領の寄進状や上位権力が発給した安堵状からは、中山法華経寺の軌跡だけでなく、中世の下総国における武家勢力の展開がうかがわれる。
近世文書は、法要の費用をまとめた帳簿、寺院の来歴や法式をまとめた要録、奥女中の参詣に関する書状など寺院経済、寺院運営、信仰に関わる多様な文書が存在し、中世とは形を変えながらも存続した中山法華経寺の姿を知ることができる。
本文書は、下総国における日蓮宗や武家勢力の伸張を研究するための基礎史料として価値が高く、寺院史や東国武家史などを研究する上で、たいへん重要なものである。