住吉大社の神官であり歌人でもある津守国冬(一二七〇~一三二〇)筆とされる鎌倉時代後期に書写された十二帖と、室町時代後期に書写された四十二帖の計五十四帖からなる。十八帖におよぶ複雑な錯簡と大小の脱落があり、不明な点が多かったが、近年、詳細な調査研究が行われて、錯簡の状態が明らかとなり、全容が把握できるようになった。
本文の系統は平安時代の写本の系統である別本系とされるが、定家本系や河内本系も含まれている。別本として鎌倉時代後期の写本が一筆にて十一帖も残されている点、『源氏物語』研究上、価値が高い。