歌合とは歌の優劣を競う行事、または、その記録や集成を指す。集成としての歌合は、藤原頼通(九九二~一〇七四)の命によって編纂された、いわゆる「十巻本歌合」(天喜四年=一〇五六年頃成立)がその先駆けである。
堀河天皇(在位一〇八六~一一〇七)は、源雅実(一〇五九~一一二七)らに新たな歌合編纂を命じたが、崩御によって一時停滞した。藤原忠通(一〇九七~一一六四)は、雅実と共に編纂を再開し、収録範囲を内裏以外に広げ、約二〇〇度の歌合を集成したが、編纂中止により草稿のまま伝来してきた。これが後に「二十巻本歌合」と呼ばれるようになった。
本書は、承暦二年(一〇七八)四月二十八日に内裏で行われた歌合で、「二十巻本歌合」の一部である。承暦歌合は詳細な難陳や判詞が特徴であるが、本書によって初めて精確な内容が明らかとなった。
承暦歌合は古来高い評価を受けてきた歌合であり、その精確な内容を伝える本書は和歌文学史研究上、極めて価値が高い。